マルチタスクの罠と必要なスイッチ
休み明けに出勤すると、メールがたまっている。半分以上はリアクションが発生しない内容だが、返信や社内のメンバーに確認が必要なメールもちらほら。順番に対応していると、社内チャットが飛んでくる。ちょっとトラブルがあったようなので、メンバーに確認することに。15分ほどの電話会議で当該のトラブル対応は解決に向かいそうなものの、新しい相談ごとも発生したので、これは別部門の担当に声をかけてみよう。おっと、まだ未読のメールがあったのだった。あ、もう次の打ち合わせの準備をしなければ……。
あわただしいビジネス環境において、複数の仕事を同時にこなす「マルチタスク」は必須スキルのように扱われがちです。しかし、脳科学や心理学の観点から見ると、人間は高度な認知能力を必要とする作業は同時に処理できません。マルチタスクの正体は、脳内で瞬時に複数の事案の間を行き来する「スイッチング」です。
無意識なマルチタスクに潜む罠
ある事案や作業から別の事案や作業へと切り替える際、脳は一時記憶領域であるワーキングメモリをリセットし、新しい情報を広げ直します。ここで情報を後片付けして収納し、また取り出して展開するときに、コストとリスクが潜んでいます。
「どういう話だっけ」という会話に聞き覚えはないでしょうか。スイッチングに時間をかけ、巻き戻して話が進めばまだよいものの、こぼれ落ちていく情報も少なからずあります。
また、
の記事でも触れているように、集中力が散漫になることはミスを発生させることにつながります。いちど生まれたミスは、後々になって手戻りというかたちで大きなタイムロスとして膨れ上がることになります。このように、ただやみくもにマルチタスクを進めることは、効率化とは反対の結果につながることすらあるのです。ひとつのタスクをしっかり集中してやりきる、この環境こそが品質も効率も向上させることができると言えます。
チームを停滞させない高速パス回し
一方で別の視点から見れば、スイッチングをしないと決めてしまうことにもリスクが存在します。それがチームで情報共有しながら仕事を進めるという視点です。
たとえば「午前中は報告資料のまとめ作業に集中するので、メールやチャットは開かない」と決意して作業したとします。しかしこのときメールを閉じてから早々に、お客さまからイレギュラーな依頼のメールが届いている、ということもあるかもしれません。午後に気がついてから急いで社内の担当に確認しますが、実は担当者が午後は外出で戻らないとか……。こうなるとお客さまに返答できるのは翌日になってしまいます。
このようにほとんどの仕事は、他者とのパス回しで成り立っています。マルチタスクを避けてひとつのタスクに集中するあまり次に人にパスを出せず、自分のところで渋滞するというリスクも無視できません。割り込んできた作業も瞬時に判断、対応して自分の手元から次の人へと高速にパスを回すことも、チームの循環を止めないためには不可欠だと言えます。
ジレンマを打破するしくみづくり
個人作業におけるコストとリスクを最小限にするためのシングルタスク化、チームでの業務スピードを落とさないためのマルチタスク化、どちらかに偏らせないためにも、双方の特徴を理解したうえでのしくみづくりに目を向けることが大切です。
たとえば、製造業においてお客さまからの発注書がメール、FAX、オンラインストレージや専用のクラウドサービスなど、さまざまなメディアで届く場合があります。情報が分散していると、担当者はメールを見て、FAXを取るために複合機を往復し、専用システムにログインするなど、支払うスイッチングコストは膨大です。
発注書対応など処理情報が同じ業務は、共通のプラットフォームに統一するなどの見直しをすることで、作業を停滞させることもなく、またチームの連携を止めることもなく負荷とミスを軽減することが可能になります。
必要なスイッチの見極めを
マルチタスクにはスイッチングコストが存在することを認識しつつ、いかに不要なスイッチを取り除き、必要なスイッチはいつでも円滑に押すことができる環境を整えるか。このバランスをもった業務設計こそが、個人とチーム全体の生産性を飛躍させる視点ではないでしょうか。
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