便利さを疑い、不便を選択する

便利さを疑い、不便を選択する

チーム内でデータ共有・分析するために使用しているツール。手早く、効率的に目的を果たすために便利なツールが世の中にあふれています。しかし、その便利さによって失われているものはないでしょうか。今回は、「便利さのために不便を選択する」という一見して矛盾するように思えることについて考えてみたいと思います。

不便がもたらす人間的豊かさ

「不便益」。過度な便利さによって損なわれたものを、あえて不便な状況を選択することで取り戻すというという概念。不便であるからこそ生じる利益です。

たとえば、マウスでテキストをコピーして貼り付けたデジタルノートをつくるよりも、紙のノートに手で書き写したほうが記憶は定着しやすいという事例があります。車で5分の距離をあえて30分歩くことで、健康のためだけでなく新しい景色やお店を発見する偶然の出会いがあるかもしれません。

このように、テクノロジーに頼らずあえて手間をかけることで、その手間そのものが人間の能力を引き出し、生活を豊かにする側面もあるのです。

デジタルツール乱立による落とし穴

不便益の考え方は、便利さを疑うという視点から始まります。便利であることへの追求がかならずしも全方位的に正しくはない、という示唆を与えてくれます。これを、ビジネス環境にあてはめて考えてみましょう。

たとえば冒頭の、チーム内でデータ共有・分析するツール、一見すると生産性が上がっているようですが、これをさらに他チームと共有しようとするとどうでしょうか。フォーマットが合わない、ツールの使用方法に慣れていない、他チームでは別のツールのほうが使いやすいなどの理由で、共有にハードルが生まれることは容易に想像できると思います。これが「部分最適の罠」です。

個人や一部のチームでの部分最適を求めた結果、社内でいくつものツールが乱立し、いざチーム間や全社で連携しようとすると非効率性を引き起こしてしまうのです。

制約がもたらす全体最適

ここでどうしても必要となるのが、意図的な不便さ、制約の導入です。個人や一部のチームでお気に入りのツールを自由に使いたいという希望を制限し、全社でルールを統一して特定のツールを使用します。これはツールの種類だけにかぎらず、同じツールに複数の機能、プロセスがある場合にも同じことが言えます。

個人単位では一時的に不便さを感じることになりますが、関係者全員が同じ型で業務をすることで、結果的にデータ連携や共通言語でのコミュニケーションがスムーズになります。部分的な不便さ、制約を受け入れることで、組織としての「全体最適」を獲得するというアプローチです。

便利さへの無条件の肯定をリセット

日常における「不便益」もデジタルツールの「種類と機能の制約」も、その根底にあるのは短期的な便利さを疑い、意図的に不便を許容することです。それにより人間的な豊かさの獲得や、より広範な組織の生産性向上につながります。AIを筆頭にテクノロジーが高速で発展している昨今、ただ多機能で便利なものを取り入れるのではなく、不便さの許容によって生まれるものがないかということも考えてみてはいかがでしょうか。

書いた人

関尾 潤

制作・編集職として事業会社と受託制作会社の双方を経験し、上流の事業立ち上げから下流の執筆・デザインまで一気通貫で対応。アペルザ入社後はマーケティング企画や営業ツール制作を担当。制作者と事業者の両視点を活かしてコンテンツを発信します。

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