見積書のデータ化にある真の役割
あの件どうなったんでしたっけ。
前職では顧客提案の資料作成をして、営業担当に同行のうえでプレゼンすることもありましたが、ついその後の進捗を追えていないことがありました。クライアント側でまだ検討中なのだろう、とのんびり構えていましたが、ずるずる時間が過ぎて気がつけば自然消滅。クライアントに聞くと案件そのものがお流れになったとの説明のようですが、実際のところまではわかりません。もし適切なタイミングでフォローして、再提案できていればどうだったろうか、と思い出す案件は少なくありません。
この「出しっぱなしの見積」。似たような事例は、BtoBの領域では珍しくないのではないでしょうか。見積書を提出したあとの適切なフォロー、できていますか?
データ化の効果は工数短縮のみにあらず
DXの取り組みで見積書のデータ化を検討する、あるいはすでにデータ化済みということもあると思います。しかしそのデータの用途を、注文書と照合するときに検索するためという目的に限定していないでしょうか。実際に注文が入ったときに初めて見積データを確認していては、せっかくのデータをフル活用できていません。防げたはずの「出しっぱなしの見積」も、減ることはありません。見積書のデータ化は、ただ工数短縮のためでなく、受注機会を逃さないためにも重要な取り組みです。
こと製造業においては、受注プロセスは製品や取引によって異なります。今回は主なプロセスに分けて、どのような見積データ活用があり得るかを考えます。
受注組立生産(ATO):機会損失を防ぐ「宝の山」として
部品はあらかじめ生産、在庫保管しており、受注後に仕様によって組み立てる受注組立生産の場合、まさに「出しっぱなしの見積」が最も発生しやすい領域ではないでしょうか。
提出日と有効期限を一覧で管理し、未受注かつ一定期間を経過している見積書を抽出すれば、適切なタイミングでのフォローも可能です。金額が高いのか、何が懸念点なのかをヒアリングして再見積を提出できれば、受注機会を逃さない対策になります。また、失注となった見積のパターンを分析することで、特定の部品やオプションに原因があることも浮かび上がるかもしれません。
受注設計生産(ETO):数年後を勝ち取る「知的財産」として
案件ごとに顧客の依頼内容によってゼロから設計する受注設計生産の場合、見積提出時にはすでに商談が深く進行しています。ここでの見積書は単なる価格提示ではなく、なぜこの仕様かというプロジェクトの設計図となります。見積書の後追いを忘れて失注するようなケースはないはずですが、この設計図のデータを蓄積することで、次のプロジェクトに活かすことができます。数年後に設備の更新、リプレースがあるような場合、前回の見積書データが再提案の強力な根拠になります。
受注生産(MTO):適正利益を守る「防波堤」として
顧客からの注文があってから製品の生産を開始する一般的な受注生産の場合も、「出しっぱなしの見積」の対策として見積書データが活用できます。フォロー漏れの防止はもちろんですが、データ化にもうひとつの役割があります。
昨今のように材料調達費の変動が激しい環境下では、提示価格も適宜見直すことが不可欠です。過去の見積書データと当時、および最新の原価を紐づけて管理することができれば、根拠をもたせた価格設定、価格交渉も期待できます。
見込生産(MTS):顧客動向に気づく「先行指標」として
顧客からの需要を見込んで標準化された製品を生産、在庫保管する見込生産の場合は、都度の見積もりよりも需要予測が重要です。このとき、見積書の製品数量、提出日、希望納期のデータは、蓄積されればされるほど高精度の需要予測を作成することにつながります。余剰在庫や欠品を防ぎ、工場の生産計画のアクセルとブレーキの役割を果たします。
受注プロセスに合わせてまずは確認を
このように受注プロセスによってもデータの用途は異なり、すべての見積書が同じ価値を持つとはかぎりません。注文書のデータでじゅうぶんというケースもあるでしょう。しかし、相見積もりを出す、組み合わせや仕様変更ができる、顧客の稟議プロセスを待つ、このような状況での見積書データは顧客コミュニケーションの根拠になり、受注を左右するシグナルになります。
私もあのとき、また別のあのとき、見積書のデータ活用ができていればと反省しきりです。先月から「出しっぱなしの見積」になっている案件がないか、まずは確認してみてはいかがでしょうか。
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