なぜ今、業務効率化に取り組むのか
「ただいま戻りました」
「お疲れさまです…… もう19時ですけど?」
「今日中に注文書回したいから」
懇意にしている取引先に足繁く通い、夕方まで打ち合わせで外出、そのまま直帰されるかと思いきや夜になって帰社してから事務作業を始める。営業の諸先輩方のこのような姿に、見覚えはないでしょうか。事務作業の効率化が進めば、このような光景も減っていくかもしれません。
効率化のゴールはコスト削減だけではない
業務効率化というと、「工数を削減して人件費を圧縮する」「残業時間を減らして働き方改革につなげる」という文脈として語られがちです。たしかに月間の作業工数が減れば、5人がかりだった事務作業が4人で済むなど、計算上は人件費の削減につながることもあり得るでしょう。結果として残業が減れば、これもコスト削減になります。
しかし現場の実態としては、浮いた人員や時間といったリソースの使い道が不明瞭で、ただ時間を減らすことを目指すだけ、という構図になっていないでしょうか。効率化を進めて社員の帰宅が早くなった、余暇が増えて社員のワークライフバランスを保つことができた、もちろんこれもひとつの成果かもしれません。人材不足の問題が顕在化している昨今、すでに残業過多になっているポジションがあれば、まずは工数削減こそが喫緊の課題であるという現場もあると思います。
一方で体制面に切迫した問題がない場合、それだけを目的として効率化を進めることを提案されても、腹落ち感のない経営者や管理者の方は少なくないのではないでしょうか。
浮いたリソースをどう活用するか
ここで考えたいのが、浮いたリソースをどう活用するかということです。もっと言えば、新しく取り組みたい、力を入れたい業務にどのようなものがあるかという問いです。
たとえば営業担当の事務作業を減らしたからといって、そのまま新規の顧客訪問に費やす時間を増やせるかというと、そんなにかんたんなスライドはイメージしにくいのではないでしょうか。また、見積作成や注文処理の営業事務を担当していたチームを1人減らして、空いた1人がすぐに営業として外回りできるかというと、それもかんたんではありません。
つまり、既存の業務範囲のままで効率化を進めても、生み出された時間が宙に浮いてしまい、ただ早く帰れるようになった、という結果のみに着地してしまいます。新しく取り組むべきことが何なのかを見極めてから、その時間をつくるために効率化に目を向けるという「逆算の考え方」がポイントなのです。
職種の再定義のために効率化する
AIの普及が進み、ほとんどの定型業務がAIで代替できるとも言われている今こそ、既存の職種の業務範囲を見直すべきタイミングでもあります。電話やメールでアポイントを取得し、取引先に訪問して商談、帰社後には事務作業、というこれまでの典型的な営業担当の業務。もし、取引先や商談のデータを活用して先回りしたアプローチを計画、実行できれば、感度の高い顧客に効率よく提案することができるようになります。
また、営業からの見積作成依頼や注文処理、納品処理の事務作業に対応していた業務担当。これももし、過去の見積依頼、注文の履歴データを分析してレポート化できれば、見積依頼のままで放置されている案件をプッシュしたり、注文が入る前に先回りして提案したりと、攻めの営業をサポートすることもできるようになります。
これは一例ですが、営業や事務にかぎらずその職種の存在意義をあらためて定義し直すことで、時代に合わせた新たな業務価値を生み出すことにつながります。既存業務の効率化は、これらの改革によって売上増を実現させるため、そのリソース創出として着手するべきなのです。
一足飛びにはいかなくとも、歩みを止めない
もちろん、現実の組織運営は魔法のようにはいきません。新しい業務のためには新しいスキルを習得する時間も必要となるでしょうし、組織体制そのものを見直すにも労力がかかります。しかし、既存業務にも大きな変化が起きようとしている今、この変革のプロセスから目を背けるわけにはいきません。
帰社後に注文書を処理するために残業するのではなく、取引先訪問で得た情報をもとに新たな提案書、アプローチ先リストをつくる。同じ残業時間だとしても、そこから生み出される価値は大きく変わるはずです。今の組織に何が必要か、どのような業務価値を生み出すべきか。この観点から業務効率化のプロジェクトをスタートさせてみてはいかがでしょうか。