マーケティングは産業革命で誕生した?

マーケティングは産業革命で誕生した?

「モノポリー」のおじさんは、モノクル(片眼鏡)を付けていません。ボードゲームのあのキャラクターです。「そうだっけ」と思われた方もいるかもしれませんが、私もてっきり付けているものだと記憶していました。実は、マーケティング誕生の歴史も、同じように誤って記憶されていることが多いようなのです。

歴史の事実をたどることは、現代の成り立ちを解き明かすことにつながります。今回は、マーケティングがどのように生まれ、変遷していったのか、その序盤の歴史を見ていきたいと思います。

最初の産業革命でマーケティングは誕生していない

「マーケティングは産業革命によって誕生した。産業革命で大量生産が可能になり、供給が需要を上回ったことで、販売のしくみを考えるようになった」。そう言われるともっともらしい説明ですが、これが実は正しくありません。

産業革命は、イギリスの軽工業を中心にはじまった第一次産業革命と、アメリカやドイツなどで重化学工業を中心にはじまった第二次産業革命とに分けて考えます。18世紀後半から19世紀前半、第一次産業革命の主役は綿製品でした。大量生産に成功すると、あっという間にイギリス国内市場の需要を上回る供給量となります。しかし、だからこそ「マーケティング」が必要だとはなりませんでした。当時の労働者にはモノを買う力がなく、国家主導の統制的な経済だったため、イギリスは市場を海外に求めるようになります。軍艦でアジアに赴き、自由貿易か服従かを問うように強引に市場を開いたのです。1854年、日本の開国もそのひとつでした。ここに企業の自由競争は存在せず、したがってマーケティングの考え方もまだ誕生していなかったのです。

マーケティングが誕生したとき

マーケティングが誕生したとされるのは、19世紀後半から20世紀前半の第二次産業革命以降のことです。このときの主役製品は電灯や自動車です。大量生産が可能になったと同時に、都市に移り住み、賃金を受け取り、生活のためにモノを買うという消費者行動が成立しました。

とはいえ、この旺盛な需要を上回るほどの生産力はまだありません。つくれば売れる時代といえます。とにかく生産し、いかに早く、安く届けるかという戦略こそがマーケティングでした。これを「生産志向」といいます。第二次産業革命を経てなお、供給が需要を上回ったから販売のしくみが必要だった、という単純な構造ではなかったのです。

マーケティングの主体が変化する

技術の進化浸透によって、やがて需要と供給のバランスが変わり始めます。1930年頃から徐々に需要が減速し、つくるだけでは売れない、という状態がおとずれます。ここで人が売り歩くようになりました。セールス、営業の考え方が誕生したこのときのことを、「販売志向」のマーケティングといいます。

ほどなくして、豊さを象徴するようにテレビが急速に普及するようになります。当時のテレビの圧倒的な情報量と即時性を活用するかたちで、マーケティングの考え方も進化しました。ただ売り歩くのではなく、誰にどんな商品を、どのように届けるべきか、分析することが戦略として浸透しました。ここでついに、企業が顧客の声に耳を傾ける「顧客志向」が成立します。1970年頃に定着した顧客志向は、現代にも続くマーケティングの基本的な考え方といえます。

コトラー氏の時代分類

世界一著名なマーケティング学者、フィリップ・コトラー氏は、上述のマーケティングの歴史で生産志向の時代を「マーケティング1.0」、テレビの普及とともに販売志向から顧客志向に移り変わろうとした時期を「マーケティング2.0」としていました。

ちなみに「モノポリー」が誕生したのは1935年。まさにマーケティング1.0から、モノが余り始めた販売志向への転換期でもあります。とにかく膨張を望み、力技で巨万の富を築こうという大量生産時代の豪胆さを、色濃く表したゲームといえるかもしれません。

書いた人

関尾 潤

制作・編集職として事業会社と受託制作会社の双方を経験し、上流の事業立ち上げから下流の執筆・デザインまで一気通貫で対応。アペルザ入社後はマーケティング企画や営業ツール制作を担当。制作者と事業者の両視点を活かしてコンテンツを発信します。

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