PESOとは? マーケティングメディアの使い分け
マーケティングの勉強を始めたばかりのころ、横文字や略称の多さにとまどいました。しかも時代によって意味が少しずつ変わるらしいのです。今お読みいただいているこの「アペルザローグ」は、「PESO(ペソ)」のひとつの「オウンドメディア」。今回は、マーケティングでのメディアの変遷をたどりながら、それぞれの役割を整理してみたいと思います。
インターネット以前の2つのメディア
かつてマーケティングにおけるメディア戦略は、シンプルに「ペイド(Paid)メディア」「アーンド(Earned)メディア」の2つのみでした。ペイドメディアはお金を払って広告枠を購入するメディア。今でもあるテレビCMや新聞広告、看板広告が代表的です。一方のアーンドメディアは、広報活動によって新聞や雑誌に特集として取り上げてもらい、客観的な評価を獲得するメディアでした。
たとえばかつて、ゲーム雑誌のクロスレビューで高得点を獲得することは、売上を左右する絶大な影響力がありました。お金で点数を買えないからこそ、読者は専門家の厳しい目という「権威」を強く信頼したのです。
インターネット黎明期とトリプルメディアの誕生
インターネットが登場すると、企業は自社サイトという自ら発信内容をコントロールできる「オウンド(Owned)メディア」を持つようになります。これによりPaid、Earned、Ownedの3つで構成される「トリプルメディア」が生まれました。
ほどなくしてクチコミサイトやSNSも登場しますが、お金を払わない、自社のものでもないという点から、アーンドメディアのひとつに含まれていました。ここが理解しにくいポイントです。耳慣れない「Earned:獲得する」というメディアの概念が、ここから変遷していきます。
アーンドメディアの分離独立
雑誌などでの「専門家による責任ある発信」と、ブログのような「個人による玉石混交の発信」を同じ括りにするのは、元より少し無理がありました。企業にとって後者はコントロールできないアンタッチャブルな存在であり、マーケティングの土俵には上がりませんでした。
しかし、SNSが爆発的な普及を見せると状況は一変します。消費者のリテラシーが高まり、悪意ある書き込みを見抜きながら、自分にとって有益な一般人の声を購買の判断軸とするようになりました。ここまでくると、専門家の分析的な評価と個人の生々しい共感や反感を、同じメディアと位置付けるのは適当ではありません。クチコミサイトやSNSはアーンドメディアから独立し、「シェアード(Shared)メディア」と呼ばれるようになります。これがそれぞれの頭文字をとった、マーケティングの「PESO」モデルです。アーンドメディアについて説明するとき、まだSNSなどを含めて語られる場合がありますので、ここが混乱しやすいのです。
PESOそれぞれの役割
現在、この4つのメディアは顧客の心理プロセスに合わせて、以下のようなバトンリレーの機能をもっています。顧客はこれらをクロスチェックしながら購買を判断しているのです。
Paid:お金を払って広く早く認知を獲得する (テレビCM・新聞広告・Web広告など)
Earned:専門家や報道による客観的な信頼を獲得する (特集ニュースや記事・プレスリリースなど)
Shared:SNSなどのリアルな声で共感と意向の後押しをする (SNS・クチコミサイトなど)
Owned:自社サイトで情報を網羅して深い理解と納得を促す (自社コーポレートサイト・コンテンツサイトなど)
「アペルザローグ」はオウンドメディアです。私たちの言葉でお届けしています。「アペルザニュース」も厳密にはアペルザのオウンドメディアですが、業界のニュースを発信するアーンドメディアとしての役割ももっています。
「PESO」から「PRESO」へ?
顧客の購買行動は、自ら検索してリンク先を選ぶだけでなく、AIに「おすすめ」を聞く、あるいは聞くよりも前にAIのアルゴリズムで自然と認知するようになりつつあります。今後企業には、AIが自社商品を正しく読み取り、文脈とタイミングに合わせて適切に顧客へレコメンドしてくれるようにする努力が不可欠になるはずです。
これはかつて、広報担当者が専門家や記者に商品の利点を理解してもらうために奔走した、アーンドメディアの獲得競争に似ています。AIという新しい権威に対する情報整備が求められ、PESOは近い将来、「レコメンディッド(Recommended)メディア」を加えた「PRESO(プレソ)」モデルへと進化するかもしれません。
メディア分類の歴史は、時代とともに「顧客が何の情報を信頼するか」の歴史そのものでした。専門家の権威から、一般人の共感、そしてAIによる最適な提案へ。これからも変化し続けるメディアの本質を見失わず、マーケティングの探求を深めていきたいと思います。