セールスプロセスの見直しで不戦敗を防ぐ

セールスプロセスの見直しで不戦敗を防ぐ

あのときの店員さん、ごめんなさい。

15年ほど前、DVDレコーダーの調子がわるくなり、買い替えを検討していたときのことです。前回買ったときからかなり進化しており、新しい機種は多機能で複雑な仕様になっていました。Webでいろいろ調べて比較すると、録画容量、再生機能、チューナー数、出力・入力端子の種類と数など、メーカーを絞ってもさまざまな機種がありました。候補を3つまで絞ったところで、最後は店舗で実機を見て聞いてみようと、家電量販店に足を運んだのです。

店員さんのセールストークは3割くらいが知らなかった話、ですが残りはすでに知っていた情報でした。なるほどとあいづちを打って聞いていましたが、価格は明らかにECサイトのほうが安い。結局、店員さんからの情報を参考にしただけで、帰宅後にECサイトで購入しました。こんなことをされたら家電量販店もたまったもんじゃないよな、と罪悪感を覚えながらも、しかし不自然な消費者行動ではないだろうと、言い訳めいたもやもや感があったことを記憶しています。

営業と会う時間は短く、避けられていく傾向に

まったく同じことが、BtoBの領域にも言えたのです。

BtoBの購買プロセスのなかで、売り手企業の営業担当者と面談する時間は17%しかない、という調査結果があります(Gartner,  inc.「The New B2B Buying Journey」, 2019)。たとえば3社で比較検討している場合、1社の営業担当者に割かれる時間は約5%にまで低下します。プロセスの大半が顧客自身での情報収集と社内調整に占められており、営業担当者の介在余地がいかに少ないかを示しています。

さらに購買担当者のうち75%もが、そもそも営業担当者と会うことを避け、デジタルで購買プロセスを完結させたいと希望しているというショッキングなデータもあります(Gartner,  inc.「Gartner B2B Buyer Survey」, 2022)。メインプレイヤーがデジタルネイティブ層に移行していくことを考えると、この傾向は今後も加速していくはずです。

プロセスのデジタル化が進行

かつて、商品サービスのくわしい仕様や価格、他社との機能比較といった情報は、営業担当者が独占していました。購買プロセスにおいて、情報を得るためにはまず営業担当者と会話することが定石でした。しかし現在は、営業に会う前に公式ホームページ、専門のまとめサイト、SNSなどを通じて、あるいは対話型AIも駆使して、ほとんどの情報をオンラインで手に入れることができます。

自分たちの課題を洗い出し、解決する選択肢を調べ、具体的な方法を探して検討する。このデジタルのプロセスにおいて営業担当者に相談するという行動は、急速に減っているのです。

知らずして負けている「不戦敗」

この状況が意味するのは、売り手企業にとっての「不戦敗」の多発です。

顧客が情報収集するデジタルのプロセス上に存在していなければ、顧客の検討リストに名前が載ることすらありません。営業担当者が定期訪問で「最近お困りごとはございませんか。今回このような新商品がございまして」と声をかけるときには、すでに競合他社製品の導入に向けて調整が進んでいる……。まさに戦う機会すら得ることができずに負ける「不戦敗」の状態です。

先回りと後押しのセールスマーケティング

この不戦敗を防ぐために、まずは顧客が情報収集するデジタルのプロセスに自社も乗り入れる必要があります。これこそがセールスを拡張させた「セールスマーケティング」の発想です。

業務に潜む課題の提起、解決のための選択肢の提供、選ぶための評価基準、購買理由を裏付ける説得材料など、購買プロセスにおいて必要となる情報をオンラインで先回りして届ける。営業担当が登場する前段階で、いかに自社が有利な状況を生み出しておくか。これを実現することにより、競合他社を出し抜く「不戦勝」もできるようになるのです。

では、デジタルの購買プロセスを進める顧客に対して、営業担当者はどのような役割を果たすべきでしょうか。顧客はすでに多くの情報を持ち、自分たちなりの正解をイメージしています。ここで求められるのは最後の一押し、稟議を上げるに足る理由、顧客にとっての納得感と武器を与えることです。顧客がオンラインで知り得る情報を並べるのではなく、人の言葉、人の温度感でしか伝えられないことに注力するべきなのです。

テクノロジーと人の力でセールスを変える

顧客の行動データやテクノロジーの力があれば、マーケティングとセールスを融合させて顧客の購買プロセスを一連の流れとして把握し、適時適切なアプローチが可能になります。情報武装した顧客と対等に渡り合うためには、売り手側も情報を活用した行動様式の変化は不可欠です。テクノロジーに頼れる範囲が広がったことで、人がやるべきことの価値はより鋭敏で高度になっていると感じています。

15年前の家電量販店での私の行動、今や同じことをしても罪悪感を覚えることはありません。家電量販店の接客スタイルもオンラインと融合する形式に変わってきました。BtoBセールスのスタイルも今まさに、生き残りをかけて大きく変わりゆく転換点にあるのかもしれません。

書いた人

関尾 潤

制作・編集職として事業会社と受託制作会社の双方を経験し、上流の事業立ち上げから下流の執筆・デザインまで一気通貫で対応。アペルザ入社後はマーケティング企画や営業ツール制作を担当。制作者と事業者の両視点を活かしてコンテンツを発信します。

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